自衛官を希望する方にとって、大学進学は必要な要素でしょうか？
一般的な公務員にとって、学歴というのは非常に重要だと聞いたことがありますが、
一方では、入ってしまえば学歴なんて関係ないとおっしゃる方もいます。
では、自衛官の場合においては、学歴はどれほど重要なのでしょうか？
一般幹部候補生試験出願の条件として、大卒程度の学歴は必要
にて、細かい募集要項は記載されています。
学歴が必要になるのは、一般幹部候補生の出願時のみ
（技官、事務官、キャリア採用、薬剤師、看護師等等色々ありますが、今回は自衛官に絞ってお話しします。）
入隊後の実務に学歴は全く関係ありませんし、学歴の官僚の世界でありそうな学歴の派閥なんてものもありません。
（酒でも飲んで近況報告しようぜみたいな集まり出身によって開かれているようです。防大や防大や高等工科学校（自衛隊の高校）の卒業生ぐらいですね。）
高卒・中卒の方は、幹部候補曹や一般陸曹候補生に出願できる
幹部候補曹や一般曹候補生は、現場のプロフェッショナルとなる人たちです。
数多の役職や仕事内容がある自衛隊ですが、彼らがいなければ成り立ちません。
まずは士の階級から始まり、入隊後数年で選抜試験を受け、曹となります。
（格闘指導官の先輩、かっこよかったな〜）
大卒・院卒の方は、一般幹部候補生に応募できる
一般幹部候補生は、大卒の民間出身の方が、陸海空いずれかの幹部自衛官として、防衛大学校卒の同期と肩を並べて業務に邁進していきます。
デスクワークが多く、計画を作成したり、訓練内容を考えたり、頭を使う仕事が多い印象です。
（もちろん、体力作りは必須ですよ。）
とはいえ、学歴の基準はある程度で良いみたいです。
私が一般幹部候補生として入学した際、大学中退（つまり高卒）の同期がいましたし、
高卒で入隊して士として頑張っていたが、
どうしても体力検定に合格できず陸曹候補生試験に受からないから、
自衛隊歴４〜５年過ぎたところで一般幹部候補生試験を受けたら、なんか受かっちゃった。
ってヤツ等がいました。
つまり、一般幹部候補生試験に出願できる条件は「大卒程度」なのですが、
その「程度」に明確な基準があるわけではないようです。
（なんとなく、大学３年生くらいまで行ってたら大卒程度とみなしてもらえる雰囲気）
自衛隊は超実力主義！学歴なんて必要ない
入隊後にあなたの武器となるのは学歴ではなく、あなたの仕事ぶりです。
自衛隊には、多くの教育課程が用意されている
自衛官として必要なものは、入隊後の教育で身につける事になります。
大卒の曹士、高卒の幹部。
入隊後の処遇に、民間で得た学歴は一切関係ありません。
例えば、一般曹候補生試験に合格した人は、新隊員教育（前期・後期）で訓練を受ける事になります。
これが俗に言う、「シャバの血を、自衛官の血に入れ替える」教育です笑
大卒も高卒も、新隊員は皆同じ部屋で寝泊まりして一緒に訓練を受けます。
前期教育は、普通科の教育が施され、修了前に職種に振り分けられます。
（普通科は将棋で言うと「歩兵」の部隊のことです。最前線で戦う兵士ですね。）
後期教育では職種の教育が行われます。
（例えば、通信科に配属になったなら、通信部隊において通信機器の取り扱いを学ぶ。）
その後は配属先の部隊において日々の業務に従事していきます。
学歴は一切関係ありません。
大学卒でも、ゴミの日には部隊のゴミを捨てに行かなければならないし、トイレ掃除だってお風呂掃除だってやります。
（リヤカーにゴミを山ほど積んでゴミ捨て場へ持っていくんですが、何往復もしなければならなくて、そりゃもう大変です。）
基本教育は上記のようなものが挙げられますが、他にもたくさんあります。
陸上自衛隊ならば、自動車・自動二輪・大型・牽引等車両関係の教育に参加し、免許を取得できる話は有名ですが、
（陸自には自動車学校が何個かあります）
例えば、放射線技師等の医療従事者関連の資格、通訳、航空関係の国家資格、会計業務、人事、法律等、心理学関連等、様々な教育が存在します。
挙げたらキリがありません。というかあり過ぎて私は全てを知りません。
（法律のような自衛隊以外の世界に大きく関わる専門的なものは、民間の大学で学ぶ場せていただくこともあるようです。）
これらは全て、自衛隊の戦力を上げるため、また、自衛隊の中で全てを完結し、任務を完遂するためにあるのです。
自衛隊にはロマンがある
一般幹部候補生として入隊された方は、いずれ、普通の会社でいうところの「昇進試験」を受ける事になります。
これに受かればもっと階級も上がっていくでしょうし、より高度な役職に抜擢される事になります。
「曹として自衛官人生を送ってきたけれども、幹部になりたい。」
と思った方は、部内幹部候補生試験（正式名称は分かりません）を受けることができます。
幹部になるとお給料が少し高くなるので、収入を理由に受ける方もいらっしゃいました。
幹部になった後は、一般幹部候補生と同じく、「昇進試験」を受けていくことになります。
つまり、自衛隊は完全なる実力主義であり、学歴による昇進の差は一切ありません。
学歴がなくてものし上がれる、それが自衛隊です。
一方で曹の方達は、節目で義務教育に参加する事になります。
そこで収める成績により、階級が上がるスピードが変わってきます。
あまりにも優秀過ぎて、かなり若くして曹長まで登り詰める方だっていらっしゃいます。
つまり、本人の実力と意志により、どのようにも進んでいけます。
高卒の１等陸佐だって存在しますし、優秀過ぎてアメリカに留学される高卒の幹部の方もいらっしゃいます。
大学を卒業後、一般幹部候補生を経て幹部自衛官となり、理系のバックグラウンドを生かして技術高級課程に進まれ、研究に従事される方もいらっしゃいます。
学歴で概ねルートが決まってしまう大企業とは違って（会社や業界によると思いますが）
学歴は一切関係のない、あなたの仕事ぶりと活躍、そして何よりあなたの意志が、道を切り開いていく事になります。
（もちろん、人一倍頑張らないと切り開けません。）
ロマンがありますよね！
大学で学んだことを活かすには、時間と運が必要
逆に言えば、せっかく大学や大学院で専門的なことを学んで自衛隊で活かそうと思ってもなかなか機会に恵まれません。
私は、大学で国内法、海外で国際法を学び、入隊後は法務官になりたいと思っていましたが
（法務官は職種ではなく、共通職です。チャンスがあれば、職種に関係なく幹部なら誰でも希望できます）
それは叶いませんでした。
と言うのも、基本教育終了後は職種（部隊）で数年間、勤務をすることになりますが、部隊からしてみたら共通職に人材を持っていかれたくないのです。
配属後こそ、「法務官になりたいです！」と言っていましたが、
隊長や副隊長から
「バカ言ってんじゃねぇ」
「お前をこれからここで育てていくんだぞ」
と頭ごなしに押さえつけられてしまい、諦めてしまいました。
というか、職種で学ぶことが多すぎて、そんな事は言っていられなくなりました。
私はここで骨を埋めるんだ！
という覚悟を持って従事しなければ、とてもじゃないけど任務や訓練には臨めませんでした。（自分、不器用ですから）
つまり、大学で学んだことを活かす前に、まずは正真正銘の自衛官にならなければなりません。
自衛官としての素地を身につける事は、とても重要であり、一朝一夕ではいきません。
それに必要な知識・技術はすべて、自衛隊で学びます。
何年もかけて、
現場を経験し、
上級陸曹の背中を見て学び、
失敗と成功を繰り返して、
雨に打たれて、
少しずつ積み上げていくものなのです。
専門的な道に進むのは、その後になります。
まずは、正真正銘の自衛官にならなければ。
大卒の方からしてみれば、この「下積み時代」はとても長く感じるかもしれません。
（下積みと言ったら語弊があるかもしれません。この間お会いした４０代の自衛官の方は「一生下積みw」とおっしゃっていました。恐ろしい。つまりそれほど、色々な役職があり、様々な知識が必要であり、自衛隊の仕事は多岐に渡ると言う事です。飽きないですよw）
要するに、大学でバチバチに最先端の知識を身につけてきても、「自衛官とは何たるか」を学び終える頃にはすでに何年も経ってしまっている事になります。
下手したら１０年とか・・・
ましてや、自分の専門分野の知識が活きる役職や部隊に希望通り配属されるとは限りません。
「こんなはずじゃなかった」って退職してしまう人って結構多いんです。
なんか勿体無いですよね。
でも自衛隊の人事って複雑みたいです。
学歴は、定年退職後の再就職先に大いに関係する
話は大きく飛んで、自衛官の定年退職後の話に移ります。
定年退職を迎えるにあたり、再就職に関わる教育も受けることができます。
（自衛隊って本当に面倒見いいよね）
その際、鍵となるのは、「めっちゃ偉い指揮官をやったことがある」「大学卒業」ってことです。
ちっちゃい班の班長なんかじゃなくて、「大きい部隊の超偉い指揮官」をやったかどうかなんですが、そんなの限られた幹部だけです。
そこで注目されるのは、学歴です。
自衛隊は学歴不問の実力社会だと言いましたが、それは自衛隊の中の話です。
自衛隊に染まった高卒の偉い人は、定年退職後、一般社会においては「ただの高卒」に戻ってしまうわけです。
どんなに自衛隊の中で評価されても、退職後は一般社会に戻る事になるので、学歴によって再就職先が変わってくるようです。
でもこんなのはこれから入隊される方からしてみたらもうずっと先のことなので、今考えても仕方がないかもしれませんね。
頭の片隅にでも置いておいてください。
いかがだったでしょうか。
・一般幹部候補生試験出願の条件として、大卒程度の学歴は必要
・しかし、自衛隊は超実力主義！学歴なんて必要ない
・大学で学んだことを活かすには、時間と運が必要
・学歴は、定年退職後の再就職先に大いに関係する
について読み解いていきました。
もし入隊に興味があるようでしたら、お近くの「自衛隊地方協力本部（通称：地本）」を訪ねてみてください。
尋ねるのが怖ければ、電話等で聞いてみるのもいいかもしれません。
わからない事には全て答えてくれるはずです。
もしかしたらどこかの駐屯地や基地に連れて行ってくれるかもしれません。
こゆきの独り言
自衛官に大学卒の学歴は必要ない、もう一つの理由があります。
それは、
「奨学金の返済に追われて、家庭を持つことができない」自衛官がたくさんいたからです。
何人も見てきましたよ。
同級生が大学に進学したから自分も行った。
大して勉強も楽しくなかったし、遊んでばかりだった。
とりあえず卒業はしたけど就職がうまくいかなくて、自衛隊に入った。
（卒業すれば良い方、中退して奨学金の返済だけ残った子もいました。）
現在、日本学生支援機構に奨学金の返済をしているけれども、あと１０年はかかるので、結婚したはいいけど子どもを作ることができない。
家を購入することができない。
そもそも結婚に踏み出せない。
っていう自衛官。
これは、自衛官に限らず、現代日本全国で起きている事象だと思います。
何のために大学に行ったのかって、人生を豊かにするために行ったのではないのか。
大学に行ったせいで、その後１０年も１５年もの間借金が足枷となり、温かい家庭を作ることができないだなんて。
何となくで大学なんて行くもんじゃありません。お金に余裕があるならいいけど。
そして簡単に借金などしてはいけません。
もし学歴が欲しいのであれば、例えばですが
「慶應義塾 社会人 通信」で調べてみてください。
年間２０万円前後で４年間〜勉強すれば、慶應義塾卒になることができます。
結構大変だと思いますが、大学って本来、大変なものです。
こういう道もあるので、参考までに。
では、また。
