平和な高校生活を送っていたある日、気づきました。
恥ずかしい年頃ではある。でもさ、それって関係ないよね?
「あれ、私、お礼すら言えない人間になってる?」
高校生活2年目、夕飯の残りらしきカレーをお弁当に持ってきたクラスメイトがいた。
(もちろんレンジなんて無い。カレーがお弁当箱に入っていること自体が衝撃的だったが、冷めたカレーをため息をつきながら口に運ぶ彼女のゾンビのような顔が印象的だった。)
お母さんはいつも朝にお弁当を作ってくれている。冷凍食品はほとんど使わず、手作りの美味しいお弁当を。
私はそれを、当たり前のように思っていないか?
ありがとうって言ったことあったか?
掃除も洗濯も。
朝起こしてくれるのなんて、起こされて逆ギレする始末。
感謝したことあったか?
「ありがとう」言ってみようかな、
いやでも、恥ずかしくてそんなこと言えるわけがない。
いやいや、ちょっと待て。
「その恥ずかしいから言えない」って感情に、一体何の価値があるんだ?
伝えずに飲み込んでしまった場合、得られるものって、全く無い。
相手が得るものも、全く無い。
親に「ありがとう」って伝えることがなんか照れ臭くて言えないとか。
学校の先生や友達に「ありがとう」を伝えることが恥ずかしくて言えないとか。
お礼に限らず、「素敵だね。」とか「いい感じだね!」「あなたならできる!」ってエールを送ることが、恥ずかしいとか。
ポジティブなことを、何で相手に伝えないんだろう?
恥ずかしいけど、いいことしかないじゃないか!?
「恥ずかしいから」って感情は一旦心の隅に置いといて
恥ずかしいは、あっていいです。否定はせずに。それも大切な感情です。
存在は認めてあげて。
でもちょっと心の隅に居てもらって。
そしたら空いたスペースに勇気が湧いてくるから、一歩踏み出せる。
ある日の帰宅後、空のお弁当を鞄から出して、
「お母さん、今日もお弁当おいしかった。特に豚の生姜焼き。ありがと。」
あらー、そう?と満面の笑みを浮かべた母の顔はとても輝いていた。
そんな母の顔を見た時、心の中にブワーッと温かいものが広がって、その波に押し流されて涙が出そうになった。
「誰も美味しいって言ってくれないのよ。こゆきちゃんだけね、こうして伝えてくれるのは。」
お母さんだって心の通った人間で、ロボットじゃないんだ。
疲れていても毎日必ず3食+お弁当を作ってくれている。それに、お祖父ちゃんの文句を聞いて、寝たきりのお祖母ちゃんの介護もしなきゃいけない。さらには子供が4人もいて・・・
私が「美味しい。」「ありがとう。」って伝えると、お母さんの心も温かくなるんだ。
「ふうん、そうなんだ。」と素っ気なく台所から去る。胸が一杯で、これ以上は顔を見て話ができないと思った。
さらに行動してみる。その日の夕食。
おいしかったので「お母さんこれおいしい。」と伝えたら、
母は、あらそう?よかった!と嬉しそうにして、さらに、
「こゆきちゃんはいつも美味しそうに食べてくれるわね。お皿の中のお料理が、どんどん口に吸い込まれていくものね。見てて気持ちいいわ。」
いやなんか恥ずかしいな!!!えっなにそれ!!いつも!?見てたの?!
なんかとっても、素敵じゃない・・・?
こんな素晴らしいことを、「恥ずかしいから無理」って言って今までやってこなかったなんて、もったいない!もったいなさすぎる!!
私の言葉で誰かの心を温かくできるなんて。
こんなに素敵なことはない。
こゆきの独り言
私の大好きな世界史の先生に言われた一言が、忘れられない。
(化粧っ気のないショートヘアの女性で、それは楽しそうに歴史を語る先生だった。私は歴史全般好きではなかったけれど、まるで物語を聴いているような授業はめちゃめちゃ面白かった!「鉄さえ国土から採掘できていれば、エジプト文明は・・・」「ま、余談だけどね」と言いながら悲しそうに話していた先生の授業は最高だった。)
授業が始まり、先生が出欠簿に記入をしようとした時、教卓の前に座っていた私に、
「こゆきちゃんごめん!シャーペンの芯一本くれない?!」と。
これは緊急事態!私はすぐにシャーペンの芯を、先生に渡した。
一本だけ出すよりも2、3本取ってあげた方が早かったし、先生の役に立てることが嬉しかったので、そのまま2、3本渡した。
すると先生が、
「こゆきちゃん、優しいねえ!ありがとう!」
と大きな笑顔でお礼を伝えてくれた。
高校生の頃の私は、「自分は冷たい人間だから優しくなりたい」と漠然と思っていた。
え、大人なのにこんなにストレートにお礼を伝えてくれるの?!ましてや私が優しいだなんて・・・
私は面食らいつつも、筆箱のチャックを閉めながら
「いや、でも、たかがシャーペンの芯ですし・・・」と返すと、
「たかがじゃないよ!私今困ってたんだよ!しかもこんなに!ありがとうね!じゃ授業始めまーす!」
と先生ははつらつと授業を始めた。
私はこっそり、溢れてきた涙を拭いて、授業に臨んだ。
















